ジロ・ディ・イタリアは世界3大グランツール(ジロ・ディ・イタリア、ツールドゥ・フランス、ブエルタ・エスパーニャ)の中でも5月〜6月上旬に開催される最初のレースです。イタリアを南から北へ約34最も人気のある北イタリアアルプスの山岳ステージを含めて、最終日はミラノ中心街でグランフィニッシュ(最終ゴール)のクライマックスを迎えます。フェロートラベルのスキーエリア、ハイキングルートでは、イタリア、スイス、フランス周辺まで人気のデスティネーションとして登場する景勝地ばかりです。
今回は5月26日(火)の第16ステージ(ピンゾーロ~アプリカ)〜5月31日(日)の第21ファイナルステージ(トリノ〜ミラノ)までの9日間ツアー、28日(木)の第18ステージ~第21ファイナルまでの7日間ツアーの2本を設定開催しました。デットヒートが繰り広げられる歴代のジロでも登場する名門山岳ステージは、前々日の第15ステージの山頂ゴールとなった「マドンナ・ディ・カンピリオ」は高級スキーリゾートでもあり、スキーワールドカップ開催地としてトレ・トレコース(スラローム)で名高く、ハイキングルートももう一つのドロミテ山群、「ブレンタドロミテ」と第16ステージのスタート地点でもある周辺の「ピンゾーロ」や「パッソトナーレ」などドロマイテの岩質の奇岩と「アダメッロ氷河」など北イタリアを代表する山岳風景が広がります。
5月26日(火)第16ステージ
走行距離:174km、ピンゾーロ(午前11:50)~アプリカ(午後5:00~5:30)
5つの山岳ポイント、スプリントポイント2回
マドンナ・ディ・カンピリオ、ピンゾーロなどトレンティーノ・アルトアジジェ州からジロのプロトン(集団)達は、お隣のロンバルディア州の高山オルトレス山系(3900m)を横目に、これまたスキーツアーではお馴染みの「ボルミオ」周辺を通ってアルタ・ヴァルテリーナ地方のサイクリスト達にとって劇坂の峠といわれる「モルティローロ峠」(1854m)登板距離約11km、平均10.5%、最大22%が前半山岳ステージのハイライトファイトをしてアプリカまで約174kmを走る。専用のトレーラーに自転車を搭載し、前日からモルティローロ峠への最短アプローチルートは閉鎖なので、ボルミオ側の手前の村「ティオロ」から約14kmを最後の劇坂5kmから自転車でヒルクライムをしながら観戦地モルティローロに正午頃に到着。
イタリア人をはじめ、私達が自転車で劇坂のアプローチをしていると沿道を徒歩で歩くサポーター達が「バ~イバ~イ、ダ~イ、ダ~イ(イタリア語)、アレ、アレ(フランス語)、ゲンマ、ゲンマ(ドイツ語)、ベンガ、べンガ(スペイン語)の4か国語で行け!行け!とその背中を本番さながらに押しながら応援してくれる。まだレースまで約4時間以上もあろうにも相当な盛り上がりに歴代ジロが幾度も来るこのモルティローロの人気の凄さを感じた。峠の山頂手前に観戦スポットを陣取り、プロトン達が登って来るまではオンコースを自由自在にヒルクライムしたり、ジログッズ販売やその土地の食べ物が販売されている出店で時間を思い思いに過ごす。
【モンティローロ峠での日本人サポーター】
観戦者といえども自慢のロードバイク、マウンテンバイクを自慢げに乗りこなしながら、この峠でかつて壮絶なレースを繰り広げて人々を魅了した往年のヒルクライマー「マルコ・パンターニ」を彷彿させるサイクリストもやけに目立つ、ここでは誰もが観戦者であり、好きな選手、好きなチームを応援することは勿論、自分たちもレース前後にジロ・ディ・イタリアの本コースをしっかりと走って楽しむといういやに明るいムードが特徴である。今回の初観戦がこのモルティローロというのはかなり興奮した。TV撮影のヘリコプターが上がってくるとジロが上がってくるのも時間の問題です。ポリスカー、バイクそしてチームカーがスピードに乗って先導してくると先頭集団のクルイスフィック(オランダ)、ランダ(スペイン)、コンタドール(スペイン)の3人が勇敢に劇坂のモルティローロを駆け抜けて行く。このステージの最大の立役者はなんといってもトナーレ峠付近でメカトラブルに見舞われたコンタドールである。観戦後にTV中継で見たモルティローロの猛スパートによるごぼう抜きは彼のファンでなくても多くの人たちが興奮と感動を味わったに違いない。
【モンティローロを駆け抜けるアスリート】
【モンティローロを駆け抜けるアスリート2】
サイクルタイム(感動冷めやらぬうちに観戦後は沢山のサイクリスト達がティラーノ方面、ボルミオ方面、エドロ方面へ走り降りて行く。私達もティオロ村まで約14kmのダウンヒルサイクリングを満喫した。途中に絶景のヴァルテリーナの渓谷が眼下に飛び込んでくる。)
5月27日(水)第17ステージ
走行距離:174km、ティラノ(午後13:55)~ルガノ(午後5:00~5:30)
スプリントポイント2回
そして5月27日(水)、第17ステージはベルニナ特急のイタリア側の基点「ティラノ」スタートからヴァルテリーナの美しいネビオーロのぶどう畑や中世の教会や古城が山肌に立ち並ぶ平坦で広大なヴァルテリーナのU字谷をコモ湖畔へ北側に回り込みながら保養地「メナッジオ」そしてスイス国境に入るルガノ湖畔へと約174kmのスプリントレースだ。ティラノではヴィラッジオと言われる選手達との交流を目的としたステージや協賛メーカー等のブース、地元の食材などレース前のひと時を過ごせるスペースで楽しむ。今回の参加者のお目当ては、アルベルト・コンタドール選手(スペイン)、別府史之選手(日本)である。スタート前に談笑やサインをもらったり、ボトルのプレゼントまでもらったサポーターもいた。
【サポーターにとても親切な別府選手】
サイクルタイム(プロトンを見送るとルガノへ行く前にティラノからソンドリオ周辺まで約20kmの「センティーロ・ヴァルテリーナ」自転車専用のサイクリングコースで残雪や氷河を頂くアルプスを遠くにアッダ河の川岸に広がるのどかな風景を楽しみながらのんびりとサイクリングを楽しんだ。)ジロとは打って変わって長閑な時間が流れる。
【観戦の合間にセンティロ・ディ・ヴァルテリーナのサイクリング】
5月28日(木)第18ステージ
走行距離:170km、メリデ~ベルバニア
5月28日(木)、第18ステージはルガノ湖畔に近い「メリデ」〜「ベルバニア」までスイスから国境を越えて再びマジョレー湖畔のベルバニアまでの約170kmのスプリント、ヒルクライム、ダウンヒルとスプリントとダウンヒルのテクニックが存分に発揮されたレースコースである。ここもスタート観戦なので、ヴィラッジオ滞在、チームカー訪問そしてパレードランなどお目当ての選手と記念撮影したり、スタートが刻々迫るひと時を楽しんでもらった。
【カンピオーネイタリアでの集合フォト】
【ジロ・デ・イタリアの華】
観戦後は専用車でコモ湖畔からマドンナデラギザッラ峠に位置する自転車の神様が祭られた「マドンナ・デロ・ギザッラ教会」と博物館を訪れて自転車の歴史とその進化を探求してきた。戦前から戦後、現代へ山岳戦争で軍用に使用された自転車や様々な当時の用途や目的にあった自転車、パーツ研究によってメカニックの進化から編み出された自転車の数々はサイクリストにはとても新鮮に映ったようである。さらに参加者の小林さんが木リムの工房に行きたいと出発前にリクエストがあり、教会から近かったので二人のリクエストに応えた。これは自転車マニアには大好評であり、日本からオーダーした自分の木リムが完成まじかだと実物を見れる感動は本人以外にもイタリアのものづくりの現場をみた感じがした。
【ルガノ湖畔のメリデスタート】
【観戦の合間にマドンナディギザッロ教会に立ち寄る】
【サイクリストの聖地を見る】
サイクルタイム(その後は、マドンナ・デロ・ギザッロ峠からコモ湖畔の高級リゾート「ベラッジオ」まで約15kmの絶景のダウンヒルサイクリングを楽しむ。ベラッジオからフェリーに乗って対岸の「カデナッビア」まで移動して専用車でルガノへ再び戻る。)
5月29日(金)第19ステージ
走行距離:236km、グラヴェローナ・トーチェ~チェルビニア
いよいよ後半の5月29日(金)、第19ステージは、なんとクィーン山岳ステージとしてマジョレー湖畔のグラヴェローナから西へ236km、獲得標高7059m~あの初登頂からスイス側のマッターホルンと同様に150周年目となる「モンテ・チェルビーノ」の麓のチェルビニアまでの過酷なステージでもあり標高2000mの山岳フィニッシュである。途中にスキー、ハイキングのメッカでもあるアオスタ中央渓谷を通ってトルナンシュ渓谷を約20kmチェビニアまでのヒルクライムは見応え十分。
【チェルビニア山岳ゴール】
【チェルビニア~ヴァルトルナンシュを最後のヒルクライム】
【チェルビニア~ヴァルトルナンシュを最後のヒルクライム2】
サイクルタイム(チェルビニアの山岳ゴールを起点に4km〜12kmまで体力、レベルに合わせてジロのオンコースを自由自在にサイクリング)
イタリア人の大きな歓声と共にサルデーニャ島出身のアル(イタリア)が圧倒的な強さであの劇坂を登ってきて、後続を完全に振り切り、第19ステージを制した。ライダー(カナダ)、ウラン(コロンビア)、そして6位にマリアローザのコンタドールと続く。
青空に聳え立つモンテチェルビーノに吸い込まれそうな大迫力のフィニッシュは必見である。過酷なステージなのは、獲得標高、第1級山岳ポイントが3つ、距離からも容易に想像がつくが、ハンガーノックに見舞われたと自ら言っていた別府選手が私達の日本人サポーターから食料補給後に、再びチェルビニアへ走り出して行ったシーンを目の当たりにして最も過酷なステージであったに違いないとファイナルカーが通り過ぎるまで応援しなければという意識が強くなった。フラット、ダウンヒル主体のコースで圧倒的な強さを見せつけたスプリンター達もこの第19ステージは、本当に苦しい様相を見せながら、相当順位を落としながら辛そうに登って行くシーンではジロの難しさと過酷さを痛感させられた。選手達の様々な駆け引きや数々のドラマが生まれた第19ステージは、今後のジロにもかならず登場することだろう。
【初登頂から150周年のモンテチェルビーノ(4478m)】
5月30日(土)第20ステージ
走行距離:196km、セント・ヴィンセント~セストリエール
いよいよ山岳ステージで勝負が決定する5月30日(土)第20ステージへ突入である。アオスタ自治州から中央渓谷をジロがスタートする「セント・ヴィンセント」を横目に一足先にピエモンテ州に位置する2006年にトリノオリンピックが開催された「セストリエール」へ移動をした。第20ステージはセントヴィンセント〜セストリエールまで約196km、途中トリノ市を通過してこのステージでのハイライトでもある「チーマ・ディ・コッピ」(大会最高地点)であるコッレ・デッレ・フィネストレ(2172m)へのラフロードがある。ここまでは観戦としても是非とも行きたかったが、道路閉鎖やロードバイクでのアクセスは断念した。セストリエール周辺は規制が厳しいとポリスや関係者から事前に聞いていたが…
【セストリエールの山岳ゴール】
サイクルタイム(ジロのオンコースをセストリエールゴールから10km付近まで自由にダウンヒルとヒルクライムを存分にサイクリングできた。)セストリエールは、イタリアの自動車メーカー「フィアット」が経営するスキー場としてスキー、ハイキングと有名である。隣接する周辺の「サンシカリオ」、「クラビエール」、フランス国境附近の「モンジュネーブル」とヴィアラッティアという一大エリアを形成しています。スキーツアーでかつて訪れた方は懐かしいかも知れない。
【かわいいサポーター犬】
第20ステージは順位が決定するとあってサポーターの興奮もひとしおであった。第1級峠のセストリエールでは、スカイブルーのアスタナジャージのアル(イタリア)を先頭にライダー(カナダ)、ウラン(コロンビア)、ランダ(スペイン)そしてマリアローザのコンタドール(スペイン)が6位でフィニッシュとなった。途中のフィネストレ峠でコンタドールが遅れた際にウラン(クイックステップ)がランダ(アスタナ)に狙わないのか?というジェスチャーをTV中継で見せたのは印象的であった。単独のタイトルとチーム優先、エースを勝たせる戦略が垣間見たシーンであった。
【2006年トリノ冬季オリンピックのモニュメント(セストリエール)】
5月31日(日)第21ステージ
走行距離:185km、トリノ~ミラノ
長かった3週間に渡るイタリア縦走の幾何もの戦いによる総合成績が決定した後に、区間タイトルを狙う5月31日(日)、ファイナル第21ステージでいよいよ幕を閉じる。トリノ〜ミラノの約185kmのフラットなコースは、これまでの戦いを終えたパレードランでもあり、第21ステージの区間タイトルを狙うスプリンターがマリア・ロッサ・パッシオーネ獲得の為に最後のスプリント勝負に挑む選手やチームの様子を大通りの数ある大モニターでライブ中継に見入っている。
私達も正午前であったが規制が始まる前に専用車で凱旋走行と最後の約6kmの周回サーキットコースをインペクションしておいた。これがポイントである。どこで各々が観戦したら良いのか?周回ルートのポイントなどをチェックするのである。通常のバスだとはじかれるので、フェロー専用車にビアンキの車専用ステッカーを提携ショップで提供してもらい双方がPRを兼ねながらサーキットに入れる要因となっている。
そして午後3時過ぎには、コルソ・センピオーネ通りには、世界中からのジロファンが沿道に詰めかけていた。ジログッズの販売車やサイクル関連グッズのショップは最後のチャンスとして宣伝、販売に余念がない。周辺の軒を連ねるショップやレストランも観戦者向けのトイレ目的でオープンしていたが、ジロの集団がミラノ付近に接近してくると一斉に店をクローズして沿道応援に加わった。予定時刻より相当早くもプロトンの集団が猛スピードで周回サーキットを駆け抜けて行く。沸き起こる凄い風と車輪の音がスピードの速さを体感させてくれる。約6kmのサーキットの7周回も観戦しているとあっという間に終了してしまったという印象である。
【トリノ~ミラノの第21ステージを走り終えるプロトン】
区間タイトルは1位ケイセ(ベルギー)、2位ダーブリッジ(オーストラリア)、3位クルーゲ(ドイツ)とスプリント勝負が決定した。そして最も名誉ある個人タイトルはマリア・ローザは、コンタドール(スペイン・チームティンコフサクソ)、2位ファビオ・アル(イタリア・チームアスタナ)、3位ミケル・ランダ(スペイン・チームアスタナ)となった。壮絶な3週間に渡るジロ・ディ・イタリアの戦いが幕を下ろすと同時に、表彰台ではマリア・ローザを獲得したコンタドールの授与シーン、インタビューそしてシャンパンシャワーまで、ステージ周辺には大勢のサポーターや報道陣で埋め尽くされ身動きができない状況である。
次のツール・ドゥ・フランスでもグランツールのダブルタイトルを狙うというさらなる沢山のライバル達との新たな死闘と挑戦がこの至福と栄光のひと時から既にスタートしている。孤高のアスリートへの深い尊敬の念とさらなる高みを目指して突き動かす強靭な精神力に驚異を感じざる負えない。
そして同時にジロもツールも素晴らしい自転車の旅として、彼らが繰り広げるフィールドを観戦、応援そして沢山の世界中のサポーター達との感動や興奮を共有することによってできる国際交流まで、その国の奥深い魅力を普段、移動の列車や専用車も良いが、それだけでは出会うことのできない風景や生活の息吹に出会うこのできるサイクリングの旅こそこれから益々注目されてくるに違いないと実感して止まないのである。
「レース観戦+サイクルングの旅というスタイル」
ジロ・ディ・イタリアは観戦も楽しく、各ステージで訪れるその土地や移動中の景観はより深くイタリアの魅力を体験させてくれることだろう。そしてサイクリングをジロのオンコースやそのエリアンの周辺でレベルに合わせて時にたっぷり、のんびりそして爽快にライディングをエンジョイしてみよう。フェローサイクルが提案するレース観戦+サイクリングの旅はより深い総合自転車の旅として心に深く刻まれることだろう。
ジロ・デ・イタリアが約3500kmにも及ぶ約3週間に渡るイタリア縦走で構成された21ステージで見ることのできる景観は、中世の面影をそのまま残した都市や町、数々の歴史遺産、文化遺産そして地中海やアドリア海を臨むビーチリゾートや山岳地形に移行する前に現れる大平原や点在する湖水の数々、そして氷河を頂く3000m〜4000m級のヨーロッパアルプスの猛々しい景観までイタリアの魅力を存分に楽しませてくれる。今回のジロ・デ・イタリア観戦では、山岳ステージはブレンタドロミテ山群、アルタヴァルテリーナの連山そしてイタリア、スイス国境を成すマッターホルンやイタリア、フランス国境に近いセストリエール。そしてイタリア、スイスに近いコモ湖、ルガノ湖、マジョレー湖などの美しい湖水地方を巡る変化に富んだ美しい北イタリアの素晴らしい風景を爽快な風を感じながら本格的なサイクリングもできるのが最大の魅力である。